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冬の喝采 [Book]

冬の喝采

冬の喝采

  • 作者: 黒木 亮
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/21
  • メディア: 単行本
箱根駅伝を瀬古利彦と共に二度走った早稲田の選手の物語だ。主人公は、高校1年で華々しい成績を納めたものの、ケガのため高校2年と3年は大会に出ることができず、一般受験で早稲田大学に入学した。入学後もケガのため育会の競走部には入部せず、同好会で走っていたが、競技への思いを断ち切れず1年の終わりに競走部の門を叩いた。その後、監督と時に衝突しながらも、その指導に従い箱根を2度走り、競技生活を終えた。

先日アマゾンで買い物をしているときにこの本の広告が出てきた。おやじは、通常はかさばるので単行本は買わない。文庫になるのを待つか、図書館で借りることにしている。この本については、600ページもあって、図書館から借りた場合、2週間では家族4人が読むのは難しいこと、図書館だと半年や1年待たされることもあることなどから購入を決めた。

ジャンルとしては小説だが、著者の競技ノートに基づいたノンフィクションと思ってよさそうだ。中学で競技を始め、大学で競技生活を終えるまでを淡々とした筆致で書いている。一貫してクールな視点で書かれているため、最初は感情移入しにくいが、早稲田に入ったあたりから俄然面白くなり、ページをめくる手が止まらなくなる。それは、もう一人の主人公と言える、監督の中村清の存在が大きい。「猛毒のある男だが、この状況を救えるのはもはやあの男しかない」としてOB会が招聘したのが中村清監督だ。著者の目を通した監督像は、相当にエキセントリックで、ついていく部員たちも大変だったろうと同情してしまう。

もう一人、世界的ランナーの瀬古利彦に関する記述も多いが、大半は事実を記録するに留まり、著者が瀬古選手をどのように感じていたのかが伝わりにくく、その点は残念である。

アマゾンの商品紹介には、「30歳になって自分を箱根路に導いた運命の正体を知る」とある。最後まで読めばその意味がわかるのだが、最後の最後にかなりのサプライズが待っていた。

早稲田の競走部のホームグラウンドは、今は所沢キャンパスだが、当時は東伏見だったようで、武蔵関に住み、東伏見を中心に練習するくだりは、あのへんを走っていたのかと興味深い。


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