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冬の喝采 [Book]

冬の喝采

冬の喝采

  • 作者: 黒木 亮
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10/21
  • メディア: 単行本
箱根駅伝を瀬古利彦と共に二度走った早稲田の選手の物語だ。主人公は、高校1年で華々しい成績を納めたものの、ケガのため高校2年と3年は大会に出ることができず、一般受験で早稲田大学に入学した。入学後もケガのため育会の競走部には入部せず、同好会で走っていたが、競技への思いを断ち切れず1年の終わりに競走部の門を叩いた。その後、監督と時に衝突しながらも、その指導に従い箱根を2度走り、競技生活を終えた。

先日アマゾンで買い物をしているときにこの本の広告が出てきた。おやじは、通常はかさばるので単行本は買わない。文庫になるのを待つか、図書館で借りることにしている。この本については、600ページもあって、図書館から借りた場合、2週間では家族4人が読むのは難しいこと、図書館だと半年や1年待たされることもあることなどから購入を決めた。

ジャンルとしては小説だが、著者の競技ノートに基づいたノンフィクションと思ってよさそうだ。中学で競技を始め、大学で競技生活を終えるまでを淡々とした筆致で書いている。一貫してクールな視点で書かれているため、最初は感情移入しにくいが、早稲田に入ったあたりから俄然面白くなり、ページをめくる手が止まらなくなる。それは、もう一人の主人公と言える、監督の中村清の存在が大きい。「猛毒のある男だが、この状況を救えるのはもはやあの男しかない」としてOB会が招聘したのが中村清監督だ。著者の目を通した監督像は、相当にエキセントリックで、ついていく部員たちも大変だったろうと同情してしまう。

もう一人、世界的ランナーの瀬古利彦に関する記述も多いが、大半は事実を記録するに留まり、著者が瀬古選手をどのように感じていたのかが伝わりにくく、その点は残念である。

アマゾンの商品紹介には、「30歳になって自分を箱根路に導いた運命の正体を知る」とある。最後まで読めばその意味がわかるのだが、最後の最後にかなりのサプライズが待っていた。

早稲田の競走部のホームグラウンドは、今は所沢キャンパスだが、当時は東伏見だったようで、武蔵関に住み、東伏見を中心に練習するくだりは、あのへんを走っていたのかと興味深い。


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風が強く吹いている [Book]

今日は台風の影響で、なみぞうもたく丸も学校は休校になった。できればおやじもこんな日には休みを取って、悪天候の中、外に出なくて済む幸せを噛みしめたいところだが、会議が4つ入っていてはそうもいかない。それにしても風が強かったな。というわけで、こんな本を思い出した。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/09/21
  • メディア: 単行本
2年くらい前に女房が図書館で借りてきて一度読んだ本だ。なみぞうが未読だったため、文庫化を機に買い求めた。おやじも女房も再読。たく丸は学校の図書室で借りて読んでいるので3度目という。なみぞうは、図書館で借りた時は表紙を見て読む気になれず、断念したらしい。確かに爽やかなスポーツ小説とは思えない表紙で、おやじも見たときは怯んだのだが、そんなことは意に介さない女房が真っ先に読んで面白いというので、続けておやじも読んだ。読んでから表紙を見直すと、これはこうでなければならないと思えてくるので不思議なものである。

初めて読んだときは、ちょっとありえない展開だと思いつつ、話の面白さに引きずられて読み終えた。再読して、本書のテーマである「チャレンジ」について考えさせられた。素人を集めて箱根駅伝を走るというのが、主人公ハイジのチャレンジだ。

映画RUDYでは、ノートルダム大に入ってアメリカンフットボールの試合に出るのが主人公の夢だ。大学に入るには学力が足りず、入れば入ったで、フットボール選手としては身長が決定的に足りない。そんな主人公のチャレンジを描いていた。

数学的にありえない〈上〉 彼らのチャレンジはいずれも成功するのだが、そのことよりもチャレンジする姿勢がたたえられるべきなのだろう。アダム・ファウラーの「数学的にありえない」の中に次のようなくだりがある。サーカスの象は、簡単な杭につながれている。力の強い象にとっては簡単に抜けるようなものだ。だからいつでも逃げ出すことができるのにそうはしない。これは、小象の時から同じ杭につながれていて、小象の力では抜くことができないくらいの強度を持たせてある。象はそれを憶えていて、大きくなっても抜くことができないと思い込んでいるためだ。とした上で、人の場合も、出来ないと思っていることは決してできない。やってみようとも思わないからだ。と、説く。チャレンジは、人ができないと思っていることを、出来ると信じるところから始まるんだな。

翻って自分の身において考えてみよう。と言っても、おやじが今さら趣味の範囲を超えてまでも何かに打ち込むといったことは考えにくいし、女房も同じだろう(多分)。だから子どもたちのことである。なみぞうやたく丸が、現実的ではないと思えるチャレンジをしたいと言ったとき、どういう対応が望ましいだろう。

おやじは、チャレンジはさせるべきだと思っている。チャレンジしないことは、将来に悔いを残すことになり兼ねないし、たとえ未達に終わろうと、その経験が無駄なものとも思えないからだ。自分の人生に責任を取れるのは自身だけだ。だから決定は本人がなすべきだ。親が出来るのはアドバイスだけだろう。そのアドバイスの観点で言えば、チャレンジを完遂しようが、未達に終わろうが、その後どうするかといったプランまで持った上でチャレンジして欲しいということだな。それではチャレンジにならないとか、打算的だとかそしられそうだが、おやじからすれば、計画のないチャレンジこそチャレンジとは言えんぞと思うのだ。

清兵衛と瓢箪・網走まで (新潮文庫) そうした意味で清兵衛と瓢箪(せいべいとひょうたん)を見直せば、瓢箪を叩き割ったり、絵を描くことを禁じようとしたりする父親の行動を一概におろかとも思えなくなってくる。子どもにとって勉強は、寝たり食ったりするのと同様、基本動作の一つである。親にとっては受けさせる義務がある。瓢箪を磨くことが清兵衛にとってのチャレンジだとはいえ、勉強を放棄してまで瓢箪に没頭するのを父親としては黙って見ている訳にもいくまい。その方法にはもちろん問題があって、あれでは何の解決にもならないんだけどね。


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笑わない数学者 [Book]

笑わない数学者 (講談社ノベルス) 笑わない数学者 森博嗣 講談社ノベルス

たく丸の学校では、長期休暇に大量の宿題が出る。この夏休みもどっさりと宿題が出て、サッカーや秋の行事の準備も合わせて忙しい日々だ。数学は問題集2冊を全部やって来いという内容で、どんなことをやっているのかと覗いてみると円順列や数珠順列の問題が出ていた。数珠順列といえば、直接の関係はないが、次のパズルを思い出した。
さて、では、もう一つ問題を出そう。五つのビリヤードの玉を、真珠のネックレスのように、リングにつなげてみるとしよう。玉には、それぞれナンバーが書いてあるな。さて、この五つの玉のうち、幾つ取っても良いが、隣どうし連続したものしか取れないとしよう。一つでも二つでも、五つ全部でも良い。しかし、離れているものは取れない。この条件で取った玉のナンバーを足し合わせて、1から21までのすべての数ができるようにしたい。さあ、どのナンバーの玉をどのように並べて、ネックレスを作れば良いかな?
これは、森博嗣の推理小説、「笑わない数学者」の中に出てくるパズルだ。でも小説の中では解答が出てこないんだな。初めて読んだとき、気になったおやじは少し考えたものの解法を思いつかず、プログラムを書いてパソコンに解かせてしまった。今回、思い出したついでにこのパズルを少し考えて見た。

まず、条件に添った玉の取り方が何通りあるかを考えてみる。1個取るのは5通り。4個取るのは、1個取る場合に残った4つを取るのと同じだから5通りある。2個取るのは並んだ2つを取るのだからこれも5通り。3個は2個の裏返しで、やはり5通り。5個取るのは全部取ることだから1通り。足し合わせると、5×4+1=21通りとなる。21通りの取り方で21種類の数字を作らなければならないということは、取った玉の数字の合計は必ずバラバラでなければならないということだ。ある数字になる玉の取り方はただ一通りしかなく、全部の玉の合計は21であるということも言える。

次に必ず含まれる玉がないかを考えると、「1」と「2」の玉は必ず必要だと分かる。この2つの数字は異なる数字の和として表すことが出来ないからだ。これらをまとめてみる。
  1. 「1」と「2」の玉を含んでいる
  2. 5つの玉の合計は21になる
  3. ある数になる玉の取り出し方は1通りしかない
条件1.と2.から、「1」と「2」を除く3つの玉の合計は18である。これから、5つの玉の数字の組み合わせは次のいずれかになる。
  1. 1,2,3,4,11
  2. 1,2,3,5,10
  3. 1,2,3,6,9
  4. 1,2,3,7,8
  5. 1,2,4,5,9
  6. 1,2,4,6,8
  7. 1,2,5,6,7
組み合わせの数をもう少し絞れないかと考えたが、思いつかなかった。それぞれの組み合わせについて、並べ方は(5-1)!/2=12通りある。組み合わせが7通りなので、12×7=84通りを検証すればよい。後述のように、実際には数はもっと少なくなる。

Puzzle1.gif まず一つ目の組み合わせ、1,2,3,4,11を考えて見る。図1のA~Eに数字を入れて検証することになる。まず「1」をどこに入れるかだが、これはAに決め打ちでよい。他の位置に入れた場合は、ぐるっと回して「1」の玉が一番上に来るようにすればAに置いたのと同じになるからだ。

次に「2」だが、これは「1」の両隣、すなわちBとEの位置に置くことができない。この2つの玉の合計が3になり、「3」の玉一つを取り出したときと同じ値になり、条件3.に反するからだ。このため、「2」の位置は、CかDだが、CとDは裏返せば同じ位置になるので、Cに決めても構わない。

Puzzle2.gif 同じようにして「3」は、「4」の玉があることを考えると「1」の両隣におくことができないため、Dに決まる。これで3つの場所が決まった(図2)。後は「4」をBに置いたケースとEに置いたケースの2通りを検証すればよい。

しかし、「4」をBに置いてもEにおいても、5が二通り(1-4と2-3)出来てしまい、上の条件3.に反する。以上からこの組み合わせでは、条件を満たす並べ方ができないことがわかった。

Puzzle3.gif その次の組み合わせ、1,2,3,5,10を考えてみよう。「1」をA、「2」をCに置くのは上と一緒だ。「3」は「5」の玉があることを思えば、「2」の両隣に置くことができないので、Eに決まる。「5」はBにもDにも置けるが、Dに置くと6を作ることができないので、Bに置く(図3)。これで、検証してみると、見事に1から21までの数字を作れることがわかる。これが答えだ。ちなみに検証は1から10まで作れることがわかればよい(理由は省略)。他にも答えがないかは、この作業を続ける必要があるが、面倒なのでやっていない。プログラムにやらせてみたところ、この解答の1通りだけだった。

このパズルは玉が5個だが、プログラムを使って11個まで調べてみた。ビリヤードだから15個まで調べたかったのだが、10個を超えると順列を作るのに時間がかかるのだ。。

玉の数 数字 並び順
1 1 1
2 1~3 1-2
3 1~7 1-2-4
4 1~13 1-2-6-4
1-3-2-7
5 1~21 1-3-10-2-5
6 1~31 1-2-5-4-6-13
1-2-7-4-12-5
1-3-2-7-8-10
1-3-6-2-5-14
1-7-3-2-4-14
7 1~43 なし
8 1~57 なし
9 1~73 なし
10 1~91 なし
11 1~111 なし
n 1~n(n-1)+1

使ったプログラムは以下。使う玉の数を1から初めて15まで求めようとするが、10を過ぎると時間がかかり、途中でキャンセルした。答えは数珠順列で考えなければならないのだが、円順列でやったため、裏返すと同じになるものもリストアップされてしまう。

/*-------------------------------------------------------------*/ /* Title: MATHEMATICAL GOODBYE 2009/8/7 */ /*-------------------------------------------------------------*/ #include "stdio.h" #define MAXNUM 15*14+2 // Prototypes void make_combination( int position, int value ); void make_permutation( int position ); void check_sum(); void print_answer(); // set Global static int num; static int permulist[MAXNUM]; static int checklist[MAXNUM]; // Main int main( int argc, char* argv[] ) { for ( num = 1; num <= 15; num++ ) { printf("\n\n-- Number of Balls = %d --\n", num); permulist[num-1] = 1; // We must include 1. if ( num > 1) { permulist[num-2] = 2; // We must include 2, too. } make_combination( num-3, 15 ); } return 0; } // Make combination of balls void make_combination( int position, int value ) { int i; if ( position < 0 ) { make_permutation( num-1 ); return; } for ( i = value; i > position+2; i-- ) { permulist[position] = i; make_combination( position-1, i-1 ); } } // Create Circular Permutation void make_permutation( int position ) { int i, j, k; if ( position < 2 ) { check_sum(); return; } j = position - 1; for ( i = position-1; i >= 0; i-- ) { k = permulist[j]; permulist[j] = permulist[i]; permulist[i] = k; make_permutation( j ); permulist[i] = permulist[j]; permulist[j] = k; } } // Check it void check_sum() { int i, j, k, maxsum, sum; for ( i = 0; i < MAXNUM; i++ ) { checklist[i] = 0; } maxsum = num*( num-1 )+1; sum = 0; for ( i = 0; i < num; i++ ) { sum += permulist[i]; } if ( sum != maxsum ) { return; } checklist[sum] = 1; for ( i = 0; i < num; i++ ) { sum = 0; for ( j = 0; j < num-1; j++ ) { k = ( i+j ) % num; sum += permulist[k]; if ( checklist[sum] != 0 ) { return; } checklist[sum] = 1; } } print_answer(); return; } // Print right circular permutation void print_answer() { int i; for ( i = 0; i < num-1; i++) { printf("%d - ", permulist[i]); } printf("%d\n", permulist[num-1]); return; }


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川端裕人の本 [Book]

銀河のワールドカップ (集英社文庫) 銀河のワールドカップ (集英社文庫)
おやじがこの本を知ったのは、5月に「今ここにいるぼくらは」が文庫化されたのがきっかけだ。その帯についていた「こんなサッカー見たことない」という紹介文を見て興味を持ち読んでみた。読み終わって積んでおいた本を、期末テストの終わったたく丸が読んだ。今は女房が読んでいる。

たく丸は、読んでいる最中は「こんな小学生、ありえない。作者は小学生のサッカーを知らないんじゃないか」と、怒っている様子だったが、読み終わった後は「これを映像で見てみたい」と変った。試合の描写が良く描けているせいだろう。特にアマリージョとの決勝戦が秀逸で、高校選手権の歴史に残る名勝負、野洲×鹿実戦を彷彿とさせる。てっきりこの試合に着想を得たのかと思ったが、小説の初出が、「小説すばる」2005年10月号~2006年2月号で、選手権の野洲×鹿実の決勝が2006年1月9日なので、小説の方が早そうだ。

たく丸風に言えば「ありえない技量を持つ小学生たちの、ありえない展開の話」ではあるが、小学生を取り巻くサッカー事情については、しっかりと調査されており、リアリティーを持って読める。テーマは「夢をかなえること」で、これは小説デビュー作の「夏のロケット」と共通していて、こちらも面白い。

今ここにいるぼくらは (集英社文庫) 今ここにいるぼくらは (集英社文庫)
博士(ひろし)という名の少年を主人公とした連作だ。「影法師の長さが、すこし違う」は、たく丸の中学受験時代に模試(だったと思う)に使われていた。切ない話だが、忘れられない作品だった。おやじの好みでは、「山田さん、ダイガー通りを行く」だな。軽めのタッチで、山田さんのスーパーマンぶりがいい。未読だが、「川の名前」と対を成す作品とのことなので、そちらも読んでみたい。

年取ったせいか、こうした「スタンド・バイ・ミー」ものに惹かれるようになった。今のところ、おやじの少年小説のベスト3はこんなところ。

The S.O.U.P. (角川文庫) The S.O.U.P. (角川文庫)
Second Lifeのようなオンライン仮想世界S.O.U.P.を根城とするサイバーテロリスト集団が引き起こすインターネットの破壊活動と、それを阻止しようとする天才プログラマーの戦い。

折しも、この本を読んでいる最中に韓国・米国へのサイバー攻撃が始まった。影響自体は、2000年のYahoo!、eBay、Amazon等への攻撃の方が大きいような気がするが、今回は意味合いが違いそうだ。米国の態度はまだはっきりしないが、韓国はこの攻撃をテロと捉えているようだ。小説の中だけではなく、ついにそういう時代に突入してしまったということだろうか。


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ライ麦畑でつかまえて [Book]

ロイターでこんなニュースが流れていた。
サリンジャー氏、「ライ麦畑でつかまえて」続編をめぐり提訴(ロイター)

[ニューヨーク 1日 ロイター] 米小説家J・D・サリンジャー氏が1日、代表作「ライ麦畑でつかまえて」の続編出版を予定している著者と出版社を相手取り、著作権侵害で提訴した。
「ライ麦畑でつかまえて」は、高校の時に読んだが、その時はピンと来なかった。「なんだ、こいつは?」と思ったのを憶えている。この頃読んだ中で「こいつはカッコいい」と感じたのは「アデン・アラビア」(ポール・ニザン)ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまいという言葉。やられたと思ったのは、梶井基次郎の檸檬だったな。それに比べると主人公の年齢が幼いということもあるかもしれないが、ライ麦畑の主人公のホールデン・コールフィールドはなあ。

キャッチャー・イン・ザ・ライ しかし今思えば、ホールデンの印象は、尾崎豊やジェームズ・ディーンと共通するものがある。彼らほどかっこよくはないのだが、彼らが好きならホールデンにも共感できるんじゃないかな。おやじには共感できなかったが、それでも読んだことを憶えているのはそれなりにインパクトがあったからだろうし、若者の必読図書ではあるだろうと思ってなみぞうが高校に上がるときに、村上春樹訳の方を買って渡しておいた。読んだかな?

そういえば、たく丸が学校の授業で村上春樹を読むことになったと言ってた。おやじが高校の時にこんな授業があった。まず、太宰や中也を家で読んで来いという宿題が出て、その後学校で彼らの生き様の話を聞き、「こいつら人間としてどうよ?」ってなテーマで議論するのだ。これは面白かったな。同じような授業だろうか。村上春樹の文体が面白いと感じるなら、村上版ライ麦畑も問題ないだろう(おやじは読んでないけど)。そろそろたく丸に勧めてもいいかもしれない。


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鴨川ホルモー [Book]

鴨川ホルモー

鴨川ホルモー

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 産業編集センター
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 単行本
おやじの好きな小説だ。内容は他愛のないラブコメなのだが、姉妹編のホルモー六景と合わせ、内容は相当計算されている。こういうバカバカしいものに、全力で取り組む姿勢が好きなんだな。

今日から映画が公開されたので、早速女房と見てきた。おやじが見たかったのは、"吉田代替わりの儀"のシーン。はもちろん知っているのだが、あの奉納の舞がどういうものか、小説を読んだ時から眼で見たいと思っていたのだ。まあ、下品と言えば下品だが、受けた。

映画の前半は小説のストーリーを忠実にたどるが、17条発動後はオリジナルとなる。居酒屋「べろべろばあ」の店長が苦しむシーンは、おやじには意味不明だったが、それを除けば映画のストーリーも「あり」だと思った。それにしても楠木ふみはカッコよいな。できれば、「あんなバカ男に負けてたまるか」というセリフは映画でも使ってほしかったよ。

アビイ・ロード トップの画像は単行本のものだ。文庫にもなっているが、表紙絵が異なる。ビートルズのアビイ・ロード(左)を模倣した表紙が好きで、単行本を載せた。人数は違うが、映画のラストカットにも使われているしね。


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人生激場 [Book]

人生激場 (新潮文庫)

人生激場 (新潮文庫)

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 文庫
週刊新潮に連載されたエッセイをまとめたもので、おやじたちの暇つぶしを目的とした内容である。一話で一箇所くらいガハハと笑えればそれでオッケーという本なのだが、時折り鋭いフレーズが飛び出してくる。
想像力の欠落とは、すなわちセンスの欠落と等しい。
料理がうまく作れないのはセンスがないからだという話にでてきた言葉。サッカー・センスというのも、次のプレーに対してどれだけイメージを持てるかということなんだろうな。

たく丸は器用なたちで、苦労に苦労を重ねて何かを習得したという経験が薄い。器用なことは武器ではあるが、逆に弱点にもなりかねないと言ってきた。出来たからと言ってほったらかしておいた場合、苦労して出来るようになったものには、完成度においてかなうはずがない。特に今やってる勉強なんかはすべて基礎であり、基礎においては継続のみが力だと思うのだよ。「じゃ、すぐに出来ちゃった場合はどうすればいいの?」とたく丸は聞くが、そういう君には次のフレーズを送ろう。
これは言い換えれば、もって生まれた才能を、さらに磨くために努力することが苦ではない、ということだ。何事においても、才能を磨き続ける才能がある、ということが、プロとしてやっていくための唯一の資格と言っていいのではないか。彼らの話を聞くたびに、私はそう思うのだ。


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ゴールキーパー論 [Book]

ゴールキーパー論 (講談社現代新書)

ゴールキーパー論 (講談社現代新書)

  • 作者: 増島 みどり
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2001/02
  • メディア: 新書
読んだ本の紹介ではなく、読んでみたいと思っている本だ。種目を問わずゴールキーパーに共通していえることがあるか、という視点で書かれた本らしい。週刊現代の「話題の本の著者を直撃」のインタビューで、著者は執筆動機を次のように語っている。
 キーパーは、ただ守っているのではない。むしろ、常に攻めているのだ──。'94年のサッカー・ワールドカップアメリカ大会に出場したゴールキーパーの多くが、自分のポジションについてこう表現していたことが印象的でした。彼らのそんな“思想”に興味を抱いたのが、この本を書いたきっかけです。
サッカー・ハンドボール・水球・ホッケー・アイスホッケーのGK選手に取材した結果、GKは次のような共通意識があるという。
 ゴールキーパーを、いわば“横軸”で見てわかったのは、やはり誰もが「防獅こそ、最大の攻撃なり」という意識をもっていたという事実です。普通、観客はチームが劣勢になればなるほどキーパーの活躍の場が増える、と思っています。でも、彼らの誰一人としてそこにやりがいを求めているわけではない。シュートを打たせないために相手の行動を読み、どんな戦術を立てるか。その詰め将棋のような過程にこそスリルがある、といいます。それはほとばしるような激しい攻めの精神であり、絶えず自分がゲームを支配し続けている、という意識です。ヨーロッパでは、スポーツにおいては「ゴールキーパーこそが戦術の中心である」と広く認知されています。
ピンチの場面を未然に防ぐことではなく、ピンチを招かないようゲームをコントロールすることが仕事であり、やりがいがあるといってるわけだ。このブログの前身のブログで、おやじは理想のキーパー像として、完璧なコーチングで相手にシュートチャンスを作らせず、観客からは暇そうに立っているだけに見える人と書いた。おやじが考える理想像とも一致する。ただし、それがうまくいった場合、観客からは何の仕事もしていないようにしか見えないところがつらいところだね。

取材を通した印象として、GK選手について次のようにも語っている。
 彼らは例外なく、実によく練習します。一番早く来て、一番遅く帰っていく。どの競技でも、最も長くグラウンドにいるのはゴールキーパーです。練習の内容といえば本当に単調なもので、たとえば左右に100回ずつ滑り込むキャッチングを延々と続けるのです。
 そうした積み重ねの結果なのか、そのポジションを選んだ資質ゆえなのか。彼らにインタビューしていて終始変わらなかったのは、「安心感」や「静けさ」といった印象でした。
う~む。心せよ、たく丸。


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BOX! [Book]

ボックス!

ボックス!

  • 作者: 百田尚樹
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
一瞬の風になれ」にインスパイアされたのだろう。天才肌の鏑矢と努力家の木樽の幼なじみ二人が主人公で、天才肌に誘われて努力家が天才肌の後を追いかけるというプロットは共通している。ただし、舞台は陸上競技ではなくボクシング。読み始めたら止まらない。おやじも1日で読んでしまったよ。読後感もさわやかだ。

以下、心に引っかかった言葉をいくつか。
スポーツの世界では、素直なことが伸びる条件です。監督やコーチの言われたとおりに同じことを馬鹿みたいに繰り返す。そんな奴が最終的に伸びます。どんな世界でもそうですが、才能だけで勝ち上がっていけるのは、初めのうちだけです。本当に天下を取るのは、牛や馬みたいに黙々とやり続けることの出来る奴です。
そうだよなー。よくぞ言ってくれたよ。
人は苦労して一所懸命に努力して手に入れたものは、決して簡単には手放さない。でも、あの子はボクシングの強さを簡単に手に入れすぎたのよ。たいした苦労も、努力もせんと、ね。だからあっさりと捨てられたのよ。
才能というのは両刃の剣やね。
才能のある子は努力の喜びを知らない子が多いのよ。出来ないことが出来るようになる喜びを知らない―ある意味ではそれは不幸なことやと思う。
これもそうかも知れないなと思う。
本当の才能というのは、実は努力する才能なのよ。努力といっても、苦しんで、苦しんでしんどい思いを克服してやるのは違うの。さぼりたい気持ちを抑えつけないと努力できない人は才能がないのよ。本当の天才って、努力を努力と思わないのよ。
やり続けたものが最終的には勝つと思っているが、うーむ、こちらはどうだろう。確かにこんな奴がいれば勝てないなあという気はするけどね。大学のとき先輩が「練習はしんどいからおもろいんや」と言ってたのを思い出したよ。おやじは、その時は、この人はMだろうかと思ったんだけどね。

# まったく関係ないが、知人にもらってメロゴールドなるものを初めて食べた。うまいねー、また食べたい。


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虚数の情緒 その2 [Book]

オイラーの贈物 450ページを過ぎてようやく本書の主役、虚数が登場する。ここから、ネイピア数(e)を導出して、オイラーの等式、e = -1 を導き出す。作者は、1993年に出版したオイラーの贈物でもこの等式を解説している。こちらは中学生にはやや難しく、メインは高校生以上だろう。出版当時かなり評判になった本で、僕も十数年前に読んだ。現在ハードカバーは絶版になっているが、文庫化された。
オイラーの公式を知ったのが、高校のときだったか、大学に入ってからだったか覚えていないが、この式にはぶっ飛んだなあ。
Euler.png
指数関数が周期関数になってるんだもの。「ホントかよ?」って感じだったなあ。図にすれば、こんな感じ。確かに両辺を等しいとしてしまえばつじつまは合うのだが、よく結び付けたもんだ。

euler.gif

ついでだが、図のサインカーブと水平軸に囲まれた部分(0~π)の面積は2になる。これも、積分を習って計算してびっくりしたことの一つだ。整数になるとは思わなかったよ。
sin.png

ネイピア数やオイラーの公式あたりの説明になると、微分・積分の考え方を使った計算がこれでもかと言うほど登場する。もう、いっそ微積分まで行ってしまった方が楽なのではないかとも思えるがそうはしない。まあ、これだけやっとけば微積分を習うときには抵抗はないだろうけど。そしてこれらの考え方が微分や積分というものだと種明かしをして、物理への応用と進む。このあたりからは読み物に戻る。

興味深かったのは、野球のバッティングの話だ。体の前へ移動を壁(軸)で止め、その運動量をバットの回転速度に加えてボールを打つ(できるのか?そんなことが)というものだ。サッカーのプレースキックに置き換えて考えてみよう。簡単のため、サッカーボールの重量を1kgとする。体重60kgの選手が秒速5mで助走して停止しているサッカーボールに弾性衝突したとする。ボールを蹴るわけではない。衝突後の選手の速度、ボールの速度をそれぞれva、vbとすると次式が成り立つ。
elastic_collision.png
これを解くと、va = 4.83 (m/s)、vb = 9.84 (m/s)となる。ボールは時速に直すと34km/hではじきとばされることになる。これがノンステップで蹴る場合と助走をつけて蹴る場合の差で、この運動量をキックに生かせと言うわけだね。そのためにはインパクトの前、たち足を踏み込んだ時に前に移動しようする体を停止して、その運動量を蹴り足のスイング速度を増加させるように使えというのである(読み間違えてなければ)。インパクトでは、足とボールの衝突が弾性衝突に近づくよう、反発係数を上げるために足を固めることも忘れずにね。

対称性―レーダーマンが語る量子から宇宙まで 終盤は振り子を題材に、波動関数、量子力学へと発展していく。このあたりになると、これまで丁寧に読んできたとしても、出てくる数式の理解は難しいだろう。2階の編微分方程式だもんなあ。おやじも式はきちんと追えなかったよ(T_T)
まあ、雰囲気が伝わればいいのだろうと思う。これまでの常識が思い切り覆されるので、それが面白いと感じられればいいね。そして、後半の物理部分が面白いと感じたら、もう少し大きくなって対称性を読めばいい。この本には数式は登場しないが、高校物理をやってからの方が楽しめる。

9月中旬に読み始め、1ヶ月以上かかってようやく読み終えた。子ども向けの本とは言え、1,000ページは長かったよ。


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